KCC JOURNAL
KCCジャーナル
プロの音楽家とアニメーターが挑戦した子どものプログラミング学習を支える音と映像の可能性

Kids Code Clubが独自開発したプログラミング学習教材、「サイレントリアル」が2023年1月25日に正式公開されました。小中学生にはちょっと難しいJavaScriptによるコーディング作業を楽しいアニメキャラクターの動きと軽快な音楽や効果音がサポートしてくれるという画期的なビデオチュートリアルです。本教材の開発に1年近く携わっていただいた音楽家の米田直之さんとアニメーターのメミ・ブラックさんに創作への想いなどを聞いてみました。
聞き手:Kids Code Club 石川麻衣子(代表理事)、川添浩司(事務局長)、山本奈穂子(理事)、板垣政樹(理事)

"リズムのトリック"で子供が集中する!
板垣:当初テストで作ったサイレントリアルはBGM音楽がずっと流れていて、それを見た米田さんが急きょ音響効果を付けたものにして提案してくれましたた。
米田:映像音楽をやっているからわかるのですが、BGMのような「曲」というのはそれ自体が‟お話”を持っていて、ある種の「熱量」があるのです。それだけに子どもが集中できるのかなという疑問がありました。リズムだけのほうがきっと画面に集中して「模写」をしてもらえるという思いがあって、あのような仕上げで提案させてもらいました。
もう一つは「リズムのトリック」です。人は無音だと映像が長く感じますが、リズムがあると逆に早く感じ、そして画面に集中しやすいのです。サイレントリアルは言語を使っていないので、音楽で語るよりはサウンドデザインという考え方のほうがしっくりくるというところもありました。
米田直之(よねだ なおゆき)
高校在学中よりジャズ理論を学び、大学卒業後、ロンドンへ音楽留学。サウンドプロデューサー/キーボーディストとして、幅広い音楽性を発揮。アレンジ、バンドサポート、音楽監督などで多岐に渡るアーティストと一緒に楽曲やステージを作り上げている。映像音楽、プロダクト・施設館内サウンドデザイン制作においては、スタイリッシュな音像が特徴的。多種多様多彩なプレイヤー陣との交流も深く、ジャンルレスな制作スタイルで活動展開中。

石川:米田さんの当時コメントで、「映像コンテンツとして ‟サイレント”をコンセプトとしたものにサウンドをつけるという禅問答みたいなお題はやりがいがあります」とおっしゃっていた言葉がとても印象的でした(笑)。
川添:一度、サイレントリアルを音無しで見たことがあるのですが、ものすごく辛かったです。やはり音楽とイラストがあることで楽しい印象になるのが大きいのだと思いました。
米田:サイレントリアルで使っている音は、日本のアニメというより、海外の漫画に出てくるような音なので、それだけで「難しくないよ」という演出ができていると思います。
親しみを持ってくれるキャラの誕生
板垣:テスト版の制作で問題だったのは、画像素材サイトで見つける写真には今の画像生成AIのように一貫性がなく、場面ごとに異なる人物の写真を使うしかなかったことです。音だけではなく映像もコントロールできたらとメミさんに相談させてもらいました。
メミ:最初のキャラクター作りでは、どうやったら子どもに楽しんでもらえるか、気にかけてもらえるかという点を考える一方で、でも学んでもらわないといけないというところをビジュアルの視点から考えて、いろいろなキャラをデザインしていました。
サイレントリアルは目的がはっきりしているので、やはり子供に作業してもらわないといけないですよね。でも子供の集中ってなかなか続かないので、いかに飽きさせないかというところは悩みました。
幼少時から海外との接点が多く高校デザイン科卒業後はオーストラリアへ留学。グラフィックデザイン&テクノロジー専攻カレッジ卒業後は帰国し大手印刷会社、デザイン会社などで勤務。そしてまた海外へ。渡米後はクリエイティブディレクター/デザイナー/イラストレーターとして多種プロジェクトの制作に携わり現在に至る。海外から日本の漫画賞受賞。漫画家としても現在執筆中でもある。クリエイターとして紙面/WEB/動画などのコンテンツ制作に幅広く国内外で活動中。

板垣:ファジーパンツというネコのキャラが出てきた背景はどんなものでしたか?
メミ:Kids Code Clubの色のイメージが青で、「将来何になるかわからない可能性のメタファー」としてアメーバーのようなキャラが最初にありました。でもネコの親しみやすさを取って今のファジパンになったんですよね。

当初のキャラクター案でもいろんな役割をあてて理解度を高める工夫が板垣:当初はいろいろなキャラクター案がありましたよね!
メミ:そうですね、フクロウもあったし、金魚もありました。ファジパンがネコだから魚が面白いかなと思って作った金魚は水槽に入っていたので動きが制限されて、〇とか✖など見せるようなジェスチャーはさせられないんです。結局は‟飛ぶ系”のビジビーになったというわけです。それで、ピットとプットは子どもサイドのキャラで、双子なんですが、引っ張り役と引っ張られ役という二つの性格があるんです。
板垣:なるほど、二人で教え合うピアラーニングですね!多様性の象徴ですかね?
米田:サイレントリアルはどの国の子にも使ってもらえるものということで、あまり日本的なアニメではなく、メミさんのアメコミ(アメリカンコミック)風の感じがぴったりくるかなと最初から思っていました。
「さらっと達成感 」ー サイレントリアルの一番の魅力
板垣:実際にサイレントリアルでテキストコーディングに挑戦した小学生から「気が付いたらいろいろと覚えていた」という感想がありましたが、アニメや音が一種の「緩衝材」や「緩和剤」になっているところもあるようです。
川添:先日聞いた話で、スクラッチやマイクラをやってきた子が最近オンライン教材でテキストコーディングを始めたら一瞬で脱落だったそうなんです。「なんだか勉強みたいになってきてつまらない」というんですね。そこでサイレントリアルを紹介したら、その映像と音にしっかり反応して、「楽しそうだからやってみる」と言ってくれました。
米田:実際にサイレントリアルを見ながら、僕はテキストコードができるようになりましたからね(笑)。

サイレントリアルでは様々なイラストでコーディング作業をサポートするメミ:普通、学校の勉強でも何でも「できた!」という達成感を得るのは難しいですよね。サイレントリアルが良いのは、あまり難しく考えなくでも「できた」という体験を得ることができることです。ビデオで言われた通りに見たり書いたりしていると「あれ、できたじゃん」ってなりますよね。プログラミングの経験を積むというのをさらっとできるのが魅力ですよね。
それでも「どう見せたらわかってもらえるかな」というところは苦労しました。言葉では説明できないので(笑)、「クリック」すら絵で見せないといけないですからね。今から振り返って、あそこはもうちょっと変えたらもっとわかってもらえたのかななどと欲が出てくるところもあります。
板垣:音の面でもやっぱり苦労はありましたよね。
米田:メミさんの絵がしゃべってくれているので、音のほうからはそれをサポートするだけです。それぞれの動きに対してどれだけ自然に音を付けられるかですね。画面を見る時のリズムと手を動かす時のリズムで異なる音色を充てたりしているのも、一つのメッセージになっているんです。(一時停止のところの)鳩時計のカッコンカッコンという音や、?マークが出てくるような場面でのトライアングルの音とか、多くの人が共通イメージも持つ音でサポートするわけですが、どこまでやるかは難しいところでもありました。
「創る楽しさがあったことを子どもたちに知ってもらいたい」
米田:今回のプロジェクトでは、まずサイレントリアルのブランディングを話し合って、設計を(板垣、米田、メミの)3人で立てていくところからスタートしたので終始一貫して作業ができたのは楽でした。でもあの「テーマソング」は全くの想定外!あれはメミさんからのリクエストでしたね。
メミ:ここまでやるならサイレントリアルというイメージをドバーンと出せるテーマソングがあったらいいなと。それで米田さんにお願いしたんです。
板垣:音楽が先だったんですね。
米田:一応、参考映像みたいなのはメミさんに見せてもらいました。普段CMソングとか作っているので「30秒枠」みたいなのが見えてきて、すぐに出来上がりました。
メミ:もう音が‟どストライク”で、欲しいと思っていたものをばっちり作ってきてもらったので、テンションがめちゃ上がりましたね(笑)。ただ、音と絵を合わせるのに曲はもう100回以上は聴きました!アニメーションの動きはコンマ何秒での調整だったので、何度も繰り返し聴くことになるんです。
米田:サイレントリアルには、こういう楽しいクリエイティブの現場が裏にあったんだよっていうのを、いろんな子供たちに伝えたいです。じゃあ自分たちも何かやってみようかなと思ってくれるとよいですよね。
山本:今はAIで何でも作れてしまうというけれど、実は創るプロセス自体が重要なんだと思います。みんなで協力して創っていくということが、AIを使うと全く体験できなくなってしまいますよね。それを今回、プロのアーティストが見せてくれたというのがよかったことだと感じています。

サイレントリアルのキャラクターたち。右からファジーパンツ、ビジビー、ピット&プット
参考情報
✅「サイレントリアル」はKids Code Club プログラミングレシピ:「サイレントリアル」にて解説付きでご利用いただけます。
✅サイレントリアルのウェブサイト
✅サイレントリアルのYouTubeチャンネル
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