KCC JOURNAL

KCCジャーナル

2024/5/16

経験ゼロからのスタートでも日米でITエンジニア就職を決めた!自分の市場価値をしっかり見つめた2人の就活戦略とは

Kids Code Clubで利用するEdTechシステム開発をボランティアベースで支えるプロジェクト、One Code Clubに昨年‟第一期生”として参加した小池結子さん(大学4年生)と喜瀬真伍さん(大学院修士2年生)はこの春みごとにITエンジニアとしての就職先を決めました。ともに学部専攻はITとは無縁だったものの、「自分の生き方に合ったITエンジニアを目指したい」と米国の大学でコンピューターサイエンスをゼロから学んだ二人。就職先として日本、米国と異なる選択をした背景には何があったのか。そしてインターンシップの経験がどう生きたかなどを語ってもらいました。

聞き手:板垣政樹(Kids Code Club理事)


One Code Club
Kids Code Clubは放課後プログラミングクラブなどを通じてあらゆる子どもたちにデジタル体験・学習の機会を提供するため、教材システムや学習管理システムなどを導入している。米国で立ちあげたOne Code Clubというプロジェクトでは国内外でコンピューターサイエンスを学ぶ学生やプロボノに一部の開発プロジェクトを解放し、インターンシップ形式でリアルな開発を経験してもらっている。本インタビューで紹介した二人が参加した昨年プロジェクトはこちらで紹介している。

英語力なくてもアメリカでITの勉強がしたい!

KCC:どうしてアメリカの大学でCS(コンピューターサイエンス)を勉強することになったのか教えてください。

小池さん(以下、小池):私は専攻が経営学でITとは全く関係ないのですが、大学2年の時にインターン(広告系の仕事)をやった中国系のIT企業で出会った人たちから大きな影響を受けました。30代、40代の人でも常に知識をアップデートしていて、年を重ねても学び続けられる雰囲気が伝わってきました。しかも皆さんいくつも会社を渡り歩いて知識を蓄積していて、それを社内でどんどんシェアしている。そんな姿が格好良かったですし、自分もそうした環境で働きたいと思いました。

職場環境がとてもグローバルでそこにも関心が向きました。ただ、海外で働ける適性が自分にあるのかを確認する意味でもアメリカで1年間ITの勉強を基礎からやってみようと考え留学をしました。

KCC:英語はある程度できたんですよね。

小池:いや、全くといってよいほど勉強していませんでした。アメリカの大学も最初はESLで英語の勉強から始めて、CSの授業もPythonのHello Worldからスタートです。それからデータ分析をやったり、簡単なウェブサイトを構築したりして少しずつソフトウェア開発を学んでいったという感じです。

小池結子(こいけ ゆいこ)さん

横浜市立大学国際商学部4年。在学中の一昨年秋に米国ワシントン州、Seattle Central CollegeのSoftware Development Certificate修得のため1年留学。修了して帰国した昨年秋からSAP Japanでエンジニアとしてインターンシップを開始。来年より同社勤務の予定。

TVマンから一転、「ITを創る側の仕事」がしたい!

KCC:喜瀬さんが大学院でCSを学ぶに至ったきっかけは?

喜瀬さん(以下:喜瀬):僕もオレゴン大学の専攻は一般科学、副専攻がビジネスですし、卒業後に数年東京でTV制作の仕事をしましたがITとは全く無縁でした。そんな中で、漠然と「ITに囲まれて生活しているのにITのことを全く知らないな」と考えるようになり、ITを使う側ではなく作る側の仕事をしたいと思い始めたのがきっかけです。またアメリカに戻って勉強したいという思いも強かったです。

仕事を続ける選択肢もありましたが、コロナ禍の影響もあってかとにかく勉強がしたかったんです。若いうちに新しいことを始めないと一生無理だと思ったところも大きかったですね。

KCC:でもいきなりCS修士は大変だったのでは?

喜瀬:はい、最初は学部でやるようなCSの基礎クラスからのスタートです。大学には学部でCS経験がない人でも履修できるカリキュラムがあったのがよかったです。

喜瀬真伍(きせ しんご)さん
City University of Seattle 修士2年。今夏にSchool of Technology and Computingを卒業予定。React Nativeなどを使ったアプリ開発の経験を生かしてテキサス州にあるDaikin North Americaの開発部門でソフトウェア開発エンジニアとして勤務予定。

ITの現場の人とのつながりがとても大切

KCC:アメリカで勉強をしてどんなメリットを感じましたか?

小池:シアトルにはSIJP(Seattle IT Japanese Professionals)というエンジニアのコミュニティがあって、そこでつながったITプロフェッショナルの方を見て、やぱり学ぶ姿勢が強いですし、自分の市場価値というのを常に考えながら生きているところを直接見ることができました。皆さんどこでも働けるという自信を持っているんですよね。そういった人がグルーバルで働く人なんだと思いました。

喜瀬:全く同感ですね。あと就活の面からも思うのは、人とのコネクションというのはとっても大切だということです。応募申請を何通も用意して出していても、よほどの学歴や才能がないと結局ほかの人と差別化ができない。それよりも実際に人と会って、つながることの威力のほうがはるかに大きい。やはり「インパーソン」なつながりというのが最も強いと思うんですよね。

小池:今インターンをしている現場も、チームのほとんどがドイツやシンガポールなど海外の方で、毎日が英語でのやりとりです。アメリカでの授業やインターンシップなどを通して触れた技術の知識も生きています。アメリカで英語とITを1年やっていなかったらこんな就活の結果にはなっていなかったでしょうから、やはり1年やって良かったなと思います。

喜瀬:最初はITというとウェブサイトを作るくらいのイメージしかなかったでのすが、実際に勉強してみてわかったのはITという分野の広さです。AIにしてもネットワークにしても本当にいろいろなフィールドがあって、機会がたくさんありそうだということもわかりました。

二人との対談は放プロでも利用しているoViceで行った

自分の「市場価値」と真摯に向き合った就活

KCC:実際に就活はどんな感じで進めましたか?

喜瀬:特別なことはせずに毎日求人サイトを見て応募し続けました。でも今のアメリカでの就職状況はとても厳しく、先輩が就職した企業なども「今年は海外からの卒業生は採らない」ときっぱり言われました。アメリカ人の間でも競争が激しいのでこれは無理かなと。そこで、自分の場合は「日本語がわかる」という点を生かせるところはないかと探していました。就職が決まったDaikinも日本語ができるエンジニアを求めていたところもあり、そこは戦略がうまくいったと思います。

KCC:‟日本人エンジニア”の需要というのはあるのでしょうか?

喜瀬:もちろん今度行く職場はアメリカの企業なので現地のエンジニアがたくさんいますが、やはり日系企業だけあって「日本人の勤勉さ」みたいなものを重視するところがあるようです。日本人だけ集めるというのではなく、日本人でよい人がいればという感じで求人しているところもあります。

小池:私も大学のコースを修了してから1年、OPT (Optional Practical Training)で就く仕事を探したのですが海外からの学生は全く相手にされませんでした。そんな時ふと思ったのは、1年経ってある程度英語ができて、ITの経験もある今、日本に帰ったほうが自分の市場価値が高いはずということです。そもそもグローバルな環境で仕事をするというのは別にアメリカでないとできないことではないですし。そこでSAPのインターンシップの募集を知り、応募して合格したので帰国を決めました。

インターンシップでのリアルな経験がカギとなった

小池さんと喜瀬さんはともに、大学の授業の一環としてインターンシップをして単位を取るプログラムの下でOne Code Clubのプロジェクトに参加しました。小池さんはレシピ利用に関するデータ分析をやり、喜瀬さんはNext.jsやReact Nativeによるアプリ開発を経験しました。

喜瀬さんが開発したモバイルアプリ、Chat Monitorを利用した放プロサポートプロセス

KCC:One Code Clubでインターンシップをやった経験は就活でどう活かすことができましたか?

喜瀬:昨年のインターンシップの経験はものすごい価値がありました。あのことがレジュメ(履歴書)に書けるか書けないかで大変大きな違いがあります。インターンシップでやったことは大学の授業でやるプロジェクトとは全然違っていて、しかも解決する問題が難しい分、学ぶところがとても多かったです。大学でやるプロジェクトはある意味、点数が取れたら終わりみたいなところがありますから。

小池:私の場合はアメリカの現地でインターンシップをやったというだけでも大きな価値がありました。日本に帰ってからも、米国で3か月間プロジェクトをやったという経験をいろんな方に評価してもらえました。就活していても留学や語学留学経験者はたくさんいますが、実際にリアルなプロジェクトをやったという人はほとんどいません。そうした経験に関心を持ってくれた面接官が多かったなと思います。

実際のインターンシップでのプロジェクトでも、本当にリアルなデータに触れられたことがよかったです。データ分析の授業などではデモデータくらいしか利用できないので、行数もカラム数もものすごいあるデータを目にして驚きました。そんなリアルなデータを使って、私もいろんな分析に興味が湧いてきて自分からいろいろとチャレンジしていったのですが、そうした姿勢も評価してもらえたのが嬉しかったです。日本だとあらかじめ決められたタスクをその通りにやることを求められることが多いのだと思います。

小池さんがインターンプロジェクトで取り組んだのはBig Queryによるレシピサイトのアクセス分析でした

「結局は人とのつながりが一番の強み」(喜瀬さん)

KCC:これから就活する人にアドバイスはありますか?

喜瀬:やはり学校の授業だけでは絶対足りないということは言えます。学校の外でいろいろと学ぶことをやらないといけないと思います。ブートキャンプに行って学ぶでもよいですし、インターンシップで経験を積むのも必要だと思います。結局、コンピューターサイエンスでは世界が相手なので、単に学位を取ったくらいでは何のインパクトもないですよね。

就活のことを考えるとやっぱりより多くの人とのコネクションを作るというのが最終的に近道なんだと思います。僕もシアトルのSIJPに参加してOne Code Clubのインターンシップの機会にも巡り合えたわけですし。

シアトルのアマゾン本社にてAWSの勉強会に参加した

「関心を広げて自ら学んでいくことが重要」(小池さん)

小池:私も人とのコネクションに救われた部分がこの就活では多かったと思います。会社は外から見ていてもわからないですよね。実際によくわからずに面接を受けている人も多いと思います。でも、その会社で働いている人とつながって、実際に話を聞くことでリアルな部分を知るというのはとても大切なことだと思います。

あと、アメリカの大学ではちょっとカリキュラムに頼りすぎたと後悔するところもあります。出された課題をこなせばよいみたいな感じでやってしまい、基礎を本当に理解してこなかった。やはり大学とは別に自分の関心でいろいろと勉強していくのは大切だと痛感しています。それが結局自分の強みを作ってくれて、そこからアイデンティティにつながってくるのだと思っています。

喜瀬:「大学の勉強だけではだめ」という一方で、大学の学位など関係なく、高卒でも力がある人を受け入れる企業がどんどん増えていくというのが平等な世界なのかなとも思います。

小池:そうですね、結局中身があれば企業は採ってくれると思うので、見た目とか経歴とかをそこまで気にしなくても全然大丈夫だと思います。

SIJPのワークショップでGoogleエンジニアからゲームプログラミングの指導を受けた

インタビューを終えて

「経験値ゼロ」からのスタートだったことを感じさせないくらい二人には共通して「自走力」がありました。喜瀬さんはNext.jsで認証周りを実装するタスクを完了させた後、自ら勉強したReact Nativeを使ってKCCで使うスマホアプリを制作。小池さんは授業で得た統計の知識を駆使してBig Queryを使ったデータ解析でしっかり結果を出してくれました。

One Code Clubはリアルな開発プロジェクトに参加する中で、サポートを受けながら開発の実経験を積み上げる機会を提供していますが、これは米国労働省の学生向け「無償インターンシップルール」に基づいた仕組みです。就活でインターシップでの経験が効いてくるのはアメリカに限らず日本でも同じだということは小池さんが語ってくれたところからも明らかです。経済や政治状況から日本人が米国で働く環境は年々厳しくなっていますが、それでも米国留学してインターンシップの経験を持つ価値はあるのだと、今回のインタビューを通して確信しました。

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