KCC JOURNAL
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Metaエンジニアが語るAI時代の開発現場 ― 今年は「手書きコード・ゼロ」に向けた流れが加速する

Kids Code Clubは1月18日(日本時間)、MetaのソフトウェアエンジニアであるOsbert Lee(オズバート・リー)さんを招いたオンラインイベント、『IT英会話フォーラム』を開催しました。AIが開発の現場をどのように変えてきたのか。2022年のインターン時代から現在までを振り返るオズバートさんの語りは、多くの参加者にとって「遠い未来」ではなく、「すでに始まっている現実」として受け止められました。
Osbert Leeさん
University of Washington(ワシントン大学)情報学を学んだ後、在学中に Datadog、Tesla、AT&T、Meta、そして複数のスタートアップでインターンとして実務経験を積む。卒業後は Atlassian に入社し、その後 Amazon本社でソフトウェアエンジニアとして勤務。現在は Meta にて、社内のさまざまなチームを支える内部システムの開発に携わる。プライベートでは、米国北西地域でのハイキング、ラケットスポーツ、そしてボルダリングを堪能する。

オズバートさんは大の日本好きで何度も来日。写真は清水寺でお姉さんのAnnaさんと。2022年:当時は、とにかく人に聞いていました
オズバートさんは3年前の2022年、現在働くMeta社でインターンとして短期間開発の現場で仕事をしました。そこで参画したプロジェクトは全く経験のないPHPというプログラミング言語でのウェブ開発。内部で進行するプロセスも使うツールもすべて未知のものばかりで、「わからないことは全部メンターをつかまえては聞いていました」。そして内部で管理するドキュメントなどは「問題解決のために毎日のように見ていました」と振り返ります。
2022年後半と言えばようやくChat GPTが世に出たばかりで、せいぜいAIと簡単な会話ができる程度。インターンシップでのオンボーディングではやはり人や文書に直接頼るのが当たり前でした。

オンラインセッションでは同時通訳のキャプション付きで行われました。(写真右がオズバートさん)2023年:仕事で使ったAIは「ちょっと怪しい」ものだった
大学卒業後、Atlassianに就職。その後すぐにAmazonに移籍し、さらに2023年末にMetaに舞い戻ってきました。さらに高性能なGPT-4 Turboなどが全盛で、GoogleのGemini 1.0が登場した時期です。
「基本的なオンボーディングプロセスはそんなに変わっていませんでしたが、一般的なコーディングや知識の質問ができるAIチャットが導入されていました」
チャット形式で質問ができて、情報や文書を検索できたものの、「時々ハルシネーションを起こしたりして、あまり信用できるものではなかった」とオズバートさんは言います。
その後2024年は、GPT 4oモデルの登場で音声や画像まで理解するようになったものの、「開発の現場ではそんなに大きな変化はなかった」ようです。そしてOsbertさんがMetaに戻ってきて1年余りがたった2025年、AIパワーの急成長が始まりました。
2025年:「これはもう使える」と確信した瞬間
2025年はMetaだけではなく全米で開発者の生活が大きく変わるほどAIが進化したといいます。この年はGPT-o3とGemini 2.0の登場で幕を開け、そこからたった1年で想像を超える性能の飛躍的向上を見せました。
「AIを使えば知らない言語でコーディングが簡単に出来てしまいます」。
オズバートさん自身も、データベース言語のSQLなどはほとんど使ったことがなかったものの、AIに「これがスキーマで、こんなデータが欲しいんだけど」と伝えるだけで処理をしてくれる。その間に別の仕事をやっていればよい。「開発者の仕事の仕方が革新的に変わった1年でした」と振り返ります。

「今は更新作業のほとんどはAIが書いてきたコードです」
現在の開発スタイルについて、オズバートさんはこう率直に話しました。
「変更セットのほぼ100%はAIが書いています。
自分の仕事は、それをレビューして、OKを出すことです」
昨年はAnthropic社のClaude Opus 4.5というコーディングに優れたモデルと、Claude CodeなどのAIエージェントツールが続々登場。多くの開発者がAIを単なる作業をサポートするツールから、完全にコーディング作業をまかせるツールとして使い始めたという大きな変革につながっていきました。
オズバートさんは、Meta社だけではなく、どの企業の開発者も同じような状況にあるはずと言い切ります。「2026年に向けて、手で書くコードをゼロにしたい」という目標も、決して大げさな話ではなさそうです。
エンジニアは「実装者」から「監督者」へ
ITエンジニアがコードを書かない世界では一体仕事はどうなるのでしょうか?
「確実に言えることは、開発者の役割が大きく変わってくるということだと思います」
「人間は、何を作るべきか、どう設計すべきかを決めます。AIは、その実行を担うわけです。
現在、上級エンジニアはジュニアレベルのエンジニアにタスクをまかせ、その成果を評価するというのが普通ですが、今後は「自分がシニアの立場でAIエージェントに作業を振り、その成果をレビューするという流れになっていくはずです」とオズバートさんは見ています。

それでも基礎力は必要なのか?
ITエンジニアの面接では今もまだコーディングやデータ構造など基礎的な技術知識は問われているとオズバートさんは言います。
これに関連して、参加者からの次のような質問が出ました。
「AIがここまでコードを書くのであれば、コンピュータサイエンスの基礎を学ぶ意味は薄れませんか?」
これに対してオズバートさんは明確に否定しました。
「基礎がないと、AIの出力が正しいかどうか判断できません。
コードは書かなくても、『分かる』ことは重要なんです」
今後、ITエンジニアを目指す学生は、技術に関する知識を身に付けた上で、デザインやアーキテクチャー、ソリューションといったハイレベルのスキルを身に付けていく必要がありそうです。
オズバートさんのチームに最近参加した新参メンバーのオンボーディングは数年前とは様変わりだといいます。「もうほとんど質問はしてきません。知りたいことはすべてAIに聞けばよいからです」。

かつては開発者の「知恵袋」だったStackoverflowも今はほとんど利用されていない(Dev Classの記事 - Dramatic drop in Stack Overflow questions as devs look elsewhere for help - より)たった3年ほどで開発現場でのプロセスを一変させたAI。オズバートさんが言った「手書きコード・ゼロ」の世界は単なる通過点に過ぎず、その先ではAIが開発者に対して、人間としての価値をどう示すのかという課題を突き付けているようにも思えてきました。
(聞き手:板垣政樹、Kids Code Club理事)
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