KCC JOURNAL
KCCジャーナル
私たちが小倉城で議論した放プロキッズの成長とは

特性のある子でもデジタル体験で自信が持てる時間を提供したい!これまで放プロに参加してきた子にどんなインパクトをもたらしたかを話し合う中で、 一つの強い想いが浮き彫りになりました。
Kids Code Club理事会を小倉城で開催
意外に思われるかもしれませんが、Kids Code Club (KCC) はとても小さな組織です。5人の理事と30人ほどのボランティアクルー(通称:ボラクル)、プロボノ、パートナーの方々の手で、小中学生を対象に「放課後プログラミングクラブ(通称:放プロ)」を中心とした、プログラミング学習支援を行っています。
2023年8月、シアトル在住の理事が日本へ一時帰国するタイミングに合わせて、小倉城(福岡県北九州市)に集まり、来年度に向けて「すべての子どもたちへ、テクノロジーを通じて夢中になれるものに出会い、学び、成長できる場と機会を届ける」というビジョンをどう実現していくか議論をしました。
その中で、これまで”教えないプログラミング教室”として運営してきた放プロの中で多様な背景を抱えた子どもたちが「笑顔」と「希望」に出会えている現実を再確認しました。この記事ではその議論の一部を紹介します。

なぜ小倉城でビジネス会議?
正確に言うと小倉城に隣接する庭園です。広くて素敵な和室が会議用としても借りることができて、椅子やテーブルを備えた研修室もあり、”知る人ぞ知る”貸間スペースとなっています。

この日は、型にとらわれないクリエイティブなアイデアをみんなで出し合いたかったので、閉鎖的な会議室ではなく、オープンでリラックスできる場所を探していたところ、たまたまこのスペースを見つけて、福岡から小倉まで足を運ぶことにしました。
非日常的な空間で、メンバーは最初から最後までテンションが上がり気味でした!

デジタル体験に巡り合うだけで”激変”する子どもを何人も見てきた!
これまで放プロには延べ9,000人以上の小中学生が参加してきました。現在は週に2回(火・金曜日)のクラブ活動にそれぞれ50~60人の子どもたちが、KCCが独自に開発しているプログラミング教材「キッズコードレシピ」を使ったり、自分でWebで調べたり、子ども同士で教え合ったりして、プログラミングやデジタルクリエーションに取り組んでいます。
デジタル体験がしたいという子であれば誰でも無料で参加できるのですが、様々な理由からデジタル体験の機会を逸している子たちを積極的に受け入れてきました。その理由の一つは経済的な理由です。KCCでは、デジタル学習をしたくてもパソコンやインターネット回線が所有できない家庭に対して、一定台数のPCとWiFiルーターを無償で貸与する「デジタル探求プログラム」を実施してきました。
こうした事業を進めるために本年度は日本財団様より助成をいただき、合計46台のPCと通信量制限なしのポケットWiFiを無償貸与し、放プロに参加してもらっています。

無償貸与しているノートパソコン。オンラインでの活動やデジタル作品づくりができるスペックのものを貸し出しています。心理的に生きづらさを感じている子へのインパクト
PCの無償貸与は「経済的なインパクト」を考慮した施策ですが、もちろんパソコンがあるだけで子どもが成長していくわけではありません。
これまで100回以上行ってきた親子へのヒアリングの内容を踏まえて、放プロという場が様々な子どもにとってどのような居場所になっているのかを改めて議論し、心理的・社会的な生きづらさを感じている多くの子にも生きる希望を与えている側面があることを再確認しました。

右奥:石川麻衣子(代表理事)、右手前:川添浩司(事務局長)、左奥:山本奈穗子(理事)「ありがとう」の一言で自尊心と出会う?
放プロではテキストのチャットで頻繁に「ありがとう」という言葉が飛び交います。実名や学年はおろか、性別すらわからないアバターとしてボラクルや他の子どもと接します。それだけに、参加してくれたこと、教えてくれたことなどには常に「ありがとう」という反応が返ってきます。
ある初参加の子は、ボラクルからの「〇〇さん、今日は参加してくれてありがとう」という何気ない一言にセッション後もしばらくは「ありがとうって言われたよ!」と喜びを隠さなかったといいます(保護者からのフィードバックより)。別な子は、パソコン操作のサポートを受ける中でスタッフに「〇〇さん、(操作の)勘がいいね」という一言で大喜び。その直後から放プロでも前向きに発言するようになりました。
メタバース空間だからこそ相手の属性を気にすることなく、子どもはもちろん、ボラクルのような大人もストレートに前向きな気持ちを表現できる場になっています。そこで自然に交わされる「ありがとう」という言葉が、また自然に自尊心を呼び起こすことになっているのでしょう。そんな些細な会話でも、子どもにとっては宝のような言霊になるというのは、学校などの現実世界でのコミュニケーションが難しくなっていることの裏返しなのかもしれません。

「2段ジャンプもできないようにしてるんですけど」「なるほど」ー 放プロではチャット機能をうまくつかって自由なコミュニケーションが行われている不登校の子がデジタルデザインと出会いコンテストで受賞するまでに
私たちがどのような子どもたちにどのようなインパクトを与えたいかを議論していく中で、放プロによって生活が大きく変化したケースについて深く考えていきました。
ある母子家庭の小学生Aさんは、対人コミュニケーションが苦手ということもあって学校に行けない状態が続いていました。PCの無償貸与を受けて放プロに参加し、そこでCanva(キャンバ)というデザインアプリに出会います。そこから生活が一変しました。

Canvaは文書からチラシ、プレゼン資料、ウェブサイトまであらゆるドキュメントのデザインができるアプリです。その「デザイン」という創造性に魅了されたAさんはその後、放プロに来てはもっぱらCanvaに没頭。そしてCanvaを活用して挑んだあるプレゼンコンテストで優秀賞を受賞するまでになりました。
保護者の方の話では、「何かを作れる」ということが大きな自信につながり、しかも周囲にあるものまで「自分で作れるんじゃないか」と考えるまでになったといいます。「何かができる」ことで楽しさを味わうと、やりたくないことすら頑張ってやるようになったという心の変化もあったようです。
デジタル創作という世界で自信を得て、多くのことを前向きに考えるようになったAさんは、その後学校にも通うようになり、プログラミングの授業でも先生や生徒をサポートするなど活躍しているそうです。デジタルなクリエイティブ活動との出会いで、Aさんの生活は大きく変わることになりました。
特性のある子にどう接するか、専門家の助けが必要
もちろん、このようにうまくいくことばかりでなく、なかなか思うようにいかない側面があるのも事実です。放プロの中で子どもたちが抱く切実な願いを感じ取る場面は多くあります。
自分の作品を発表できるようになりたい
他の子に何か教えてあげられるようになりたい
(プログラミングで)やりたいことがあるけどできない
これは特性を持つ子であっても同じような希望を抱いています。そういった場面で私たちクルーがどのように接していけばよいか、どのような学習環境をつくっていけばよいか、専門家のサポートが必要であることを痛感しました。

色んな子どものニーズに寄り添ったバーチャル環境づくりまた、まだうまくいっていないケースで子どもたちからの声をあらためて振り返ると、その中に「友達をつくりたい、みんなと一緒に遊びたい」という願いが込められていることに気づきました。気の置けない友達がいるからこそ心理的安全性を感じ、そこから作品発表や発言などにつながってくるのだと思います。これからも、参加者のつながりを深めるためのサポートと仕組みづくりが必要だということで意見が一致しました。

子どもへのインパクト議論が続く(右奥:板垣政樹、理事)「すべての子どもたち」に向けてインパクトを考えたい
私たちが取り組む施策のターゲットは経済的困難を抱える子どもだけではありません。特性による困りごとを抱えている、コミュニケーションが苦手、不登校など、様々な理由から「デジタル体験の機会を逸している」子どもたちに、デジタル体験を通して仲間とともに成長し、困難を力強く乗り越える力と、将来への希望を持ってほしいと願っています。
放プロに来てプログラミングに出会い、初めて作ったプログラミング作品にフィードバックをもらい、チャットやマイクを通して参加者とつながり、他の子にちょっとした技を教え、そして人前で自分が作った作品を発表できるまでになる。そんな「成長ぶり」を見るにつれて私たちの中で強くなっていった想い。それは、必要とするすべての子どもたちに、放プロという居場所に来て思いっきりデジタル体験を楽しみ、毎日を少しでも笑顔ですごしてほしいという願いです。
来年もより多くの子どもたちに私たちの願いを届けていきます!

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