KCC JOURNAL

KCCジャーナル

2023/10/3

子どもが抱える“特性”がデジタル創作を後押し!

思い切りパソコンと向き合える時間と空間に出会ってプログラミングやデジタルスキルを伸ばすことができた放プロキッズの話 。 メタバースだからこそ自分の特性を生かせる場面があるということが分かりました。

連載『メタバースの裏側で』第2回目 【第1回目はこちら】


今年から放プロ(放課後プログラミングクラブ)に参加し始めたレモンさんは現在小学6年生。パソコンやプログラミングと出会ったのは小学5年生の時でした。学校からはGIGAスクール構想のもとChromebookのパソコンが一台支給され、自宅への持ち帰りも許されていました。さらに小学校ではめずらしい課外活動としてのパソコンクラブもあり、一緒にゲームで遊ぶ友達も周囲にはいました。小学生としては恵まれたデジタル環境のように思えますが、そこには成長を阻む思いがけない‟足かせ”がいくつもありました。レモンさんにはもっと別な環境が必要だったのです。

自由にプログラミングができない学校のパソコン

「せっかく5万円もするパソコンがそこにあるのに何もできませんでした」

レモンさんの親御さんが説明するのは学校支給のパソコン。休みの期間などは家での使用も許可されていましたが、実際に授業で使うGoogle Classroom(授業管理)やMeet(ビデオ通話)に使う以外は原則使用禁止。学校でScratchをやる場合にも許可されているのはオフライン版のみ、通常のScratchサイトで他の人の作品を見ることなども制限されていたといいます。つまり「先生がやることにしかパソコンは使えない」(親御さん)というのがルールだったようです。結局、家にパソコンがあっても自主的なデジタル学習ができなかったのです。

それに拍車をかけたのが親御さんのパソコンに対する‟トラウマ”でした。かつて自らのパソコンがウィルスに感染してひどい目に遭ったという経験があり、「そもそもパソコンというのは子どもが使ってはいけないものだ、みたいな考えすらありました」と、レモンさんのデジタル体験にさらにブレーキをかける状況だったようです。

Kids Code Clubがデジタル探求プログラムで無償貸与しているパソコン。
必要なご家庭には通信量制限なしのポケットWi-Fiも無料で貸し出している。

「壊すくらいの勢いで使い倒してください」ですべてが一変

レモンさんは2023年1月からKids Code Clubの「デジタル探求プログラム」に参加することで、デジタル活動のために自由に使えるPCを手に入れることができました。親御さんは「あれからすっかり変わった」と振り返ります。

新しいPCを使い始めた当初、レモンさんはマインクラフト(マイクラ)のMOD(モッド)にすぐに興味をもち、深くやってみたかったのですが、友達の親御さんからの「MODはウィルスが入っているかもしれないので危険だ」という一言に戦意喪失。そこから、PCにトラウマをもつレモンさんの親御さんも貸与PCに関して「あれもダメ、これもダメ」と神経質な使い方を指導するようになったそうです。そんな中、Kids Code ClubにPCの使い方を相談して返ってきたのがまさかの一言だったそうです。

「パソコンは実際に自分で使ってみないとわかりません。借り物と思わず使い倒して壊すくらいの気持ちでいろいろとチャレンジしてみてください。なにかあったらLINE貰えたらサポートしますので!」

🦉マインクラフトのMOD(モッド)
 マイクラ内で様々なオブジェクトや機能をカスタマイズ(拡張)するためのプログラムのこと。外部からインストールするほか、自分でも作成ができる。たしかに出所が不明のMODなどには危険な仕組みが隠されているケースもある。

マイクラでは、プログラミングやレッドストーンで作業を自動化することができる。また、Modと呼ばれるゲームの拡張プログラムを導入して、ゲーム内の要素や機能を変更・追加することができる。

すべての足かせから解放されて一気にパソコンをマスター

「あまり神経質に子どものやりたいことを奪わなくて良いのだと気付きました」

「失敗しても良いのだ」と気づいたのはレモンさんだけではなく、親御さんも同様でした。パソコンに対する心配からも開放され、その後は自由にPCをいじってもらうことに。そこからレモンさんは‟爆速”でパソコンスキルを上げていきます。レモンさんは何かをやり始めると過度に集中する特性を持っているのですが、自由に挑戦できるというのは逆にスキルを急速に上げる格好の環境だったのかもしれません。

「あの一言は大きかったです」

わずか半年も経たないうちに、親御さんが「いつの間にそんなことができるようになったの」と驚くほど基本的なパソコン操作をマスターしたばかりか、プログラミングのことはまずは自分で検索エンジンで調べるまでなりました。学校のパソコンでは検索そのものを学習する時以外で検索エンジンの利用はご法度。そんな環境では巡り合うことのなかった急成長でした。しかもそうして得た知識を放プロに来る他の子どもたちにもきちんと教えるようにもなりました。

子どもが感じる放プロの居心地の良さ

放プロに来るようになってどう感じているか、レモンさんに尋ねました。

「‟遊べる”人が増えて楽しい」

レモンさんが言う「遊べる」というのは単にゲームして遊ぶということだけではありません。相手の顔も実名も知らないまま、多くの子とマイクを使ってしゃべったり、画面を共有して作品を見せ合ったりできるのが放プロのメタバース空間。そこに集まる子の多くが「何かをやりたい」という共通の想いがあるからこそ、「一緒にやりませんか」という声掛けとともにピアラーニングが始まる場となっています。そんな中でレモンさんははっきりと「教えるのが好きです!」と言います。

「レモンさんは雑に教えるのではなく、きちんと画面共有して、自分で調べものまでしてでも‟教え切る”ことができる珍しい人です」(事務局長の川添氏)

きちんと教えたいという強い気持ちにもしっかりと応えてくれる友達がいて、それが「楽しい遊び」につながっているようです。学校や近所との友達とは違うとレモンさんは言い切ります。

レモンさんが目下力を入れているのがRoblox(ロブロックス)というオンラインゲーム環境で、3Dのゲーム開発ができる世界で大人気のプラットフォームです。放プロでもRobloxに興味を持つ子が増えてきています。

放プロにてRoblox Studioを使って共同編集でアスレチックゲームを作っているところ。ひとりでやっているとすぐに挫折してしまうことも、あれこれ一緒に考えながら進めると楽しい。

ただし、本格的なゲーム開発をするには一定のプログラミング知識が必要で、レモンさんもそこには大きな壁を感じているようです。放プロでは今、RobloxやUnity、Blenderなど新しいゲーム開発や3Dデザインなどに挑戦していく子どもたちもサポートしていく仕組みを模索中です。自らの興味に真っすぐ突き進むレモンさんのような子が思う存分活躍できるピアラーニング環境を放プロが提供できれば、他の多くの子にも価値ある居場所となっていくはずです。

取材・執筆: 板垣政樹、川添浩司(一般社団法人 Kids Code Club)

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